23日付けの朝日新聞は、一面のトップで『ユニクロ、「世界同一賃金」導入へ 優秀な人材確保狙う』と題するニュースを配信した。
で、二面にその解説記事を載せ、三面にはユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長のインタビューを掲載している。
私は、柳井社長の発言そのものよりも、朝日新聞がこういう紙面の作り方(←具体的には「一私企業のプレスリリースに近い話題のために、一面トップからの3ページを費やす編集方針」ということ)をしたことに、強い印象を受けた。
というよりも、率直に申し上げて、あきれた。
「朝日新聞は、財界人の提灯を持っていると思われることを恐れなくなったんだな」
と、ちょうど電話をかけてきた知人を相手に話し込んだほどだ。
インタビューが載ったのが、「○○経済」「○○ビジネス」のようなタイトルを冠した媒体であったのなら、はじめから何も騒ぐことはない。その種のメディアが、有力企業の経営判断や、経営者の単独インタビューを珍重することは、読者層から言って、ごく自然なことだ。ビジネスの世界に身を置いている人間は、多かれ少なかれ、トップの考え方や経営哲学に関心を払っている。そうでなくても、世界の大きな部分を企業経済が動かしている以上、その活動には、たくさんの読者の注目が集まる。
インタビューを掲載した媒体が朝日新聞であったことを考慮に入れたのだとしても、柳井社長の言葉それ自体が、特段に大きな問題をはらんでいたわけではない。インタビューは、国際社会に打って出る心構えを持った経営者の発言として受けとめる限り、十分に了解できる内容だった。世界をまたにかけて商売をしようという人間が、強い覚悟を持つことは、むしろ当然の話だ。私自身、野心的な経営を展開している起業家の口から、ぬるまったい、偽善的な人生訓を聞きたいとは思わない。
ただ、経営者が述べる理想と、現場に反映される現実は、必ずしも一致するものではない。
その意味で、朝日新聞のようなメディアは、経営者の言葉や企業の広報が配布するプレスリリースを、ある程度批判的にチェックせねばならない。実際にも、これまで、企業経営者が賃金体系について踏み込んだ発言をしたような場合、新聞は、労働側の受け止め方や社会的な影響について、トップの発言とは別の見方を紹介するべく、紙面の中に一定の行数を確保してきた。
その部分が、今回の記事では、いかにも少ない。
ユニクロに対して浴びせられている「ブラック企業批判」についても、一応、質問の中に折り込んではいるものの、深く突っ込んでいたとは言いがたい。
とにかく、この記事を読む限り、朝日新聞は、「世界同一賃金」という柳井社長のプランを、来たるべき時代の指針としてあっさりと容認しているように見える。
そんなことで良いのだろうか?